さくらの木の蕾が色付き始め
咲くにはまだ早い肌寒いある日
私は、急にビジネスで大阪にセミナーに行くことになった。
お恥ずかしい話だが、この年になってはじめての経験。
久しぶりの新幹線!
私の新幹線の記憶といえばやっぱり
冷凍みかんとお茶
これを聞いて、懐かしい!と思う方は
失礼だが、若い世代ではないかな・・・^^
新幹線のホームで売店を覗くと
ない!
ないじゃないか!
冷凍みかんが。
さみしい・・・
そんなに年月が経ってしまったのか…
ちょっと大げさな気もするが
浦島太郎の気分だった。
仕方なく私は、サンドイッチと飲み物を買って新幹線に乗り込んだ。
別に見ることもない!と思ったが
空いていたので窓側の指定席を取っておいた。
発車のベルがなり響き
音もなく新幹線がすべりだした。
私は、大阪に着くまでにパワポの最終調整をしようと
黒のレッツを開き
いつもの微糖の缶コーヒーをあけ
作業を始めた。
どのくらい時間が経っただろう。
ふと窓の外を見ると、
先程までの、都会の風景はもうなくなっていた。
都会とは違う低い町並みや、畑、山などが、目に入ってきた。
その風景を見ているとぼうっとしてきて、
いつの間にか私は、フラッシュバックのように
昔の風景を思い出していた。
外にはやはり、畑があり、畑のあぜ道に
どこかの会社の看板がポツン ポツンと
誰かが見てくれるであろうと、新幹線のほうを向いて立っている。
顔を社内に向けると、子供が数人おしゃべりをしながら
楽しそうにはしゃいでいた。
家族旅行なのかな?
ひとりは、マンガを読んでいる。
天才バカボンだ!
思えば、私もバカボンのパパと同じ年になったんだな。
年も取るわけだ
その子供たちをよーく見ると
その一人は小学校3、4年の頃の私だ。
う~ん。
もう30年以上も前の話になるか。
あっ!そうか
「これは父の会社の社員旅行だ。」
私の父は、小僧っ子の頃から車の修理工場で修行をして
独立し、自分で車の修理工場をしていた。
「ということは、これから熱海のハトヤに1泊旅行だ。」
父の会社では、毎年夏に社員旅行で
熱海にいくのが、恒例行事になっていた。
子供たちの後ろの席では
父や社員の人達は、もうビールを飲んでいた。
「父もまだ若い!」
だが、もう髪の毛は薄くなっているというか、
あの年で
「もういっちゃってたんだっけ。」
晩年の父とは、さすがに色は黒いが髪の多さは変わらない。
今の私とあまり変わらない年なのにである。
現在の私はというと、細く白髪混じりにはなったが
奇跡的に、奴らはたくさんはえている。
また子供たちに目をやると
当時の私は、懐かしいカメラを持って窓際にいた。
「あっ、そうそう
これからトンネルが多くなり海が見え始めるんだっけな!」
よく一瞬だけ見える海を、カメラで撮ってたな?
(愛称はvacation cameraのローマ字読みだったけな?)
今思えば、これから海に行くんだから
いくらでも写真を撮れたのに。
一瞬だけ見える海にワクワクして、
海が見えるたびに、パチパチシャッターを押してたな。
24枚撮りのフィルムを、それだけで使いきっちゃって
「タダじゃないのよ!現像代だってかかるんだから!」
って、母親に怒られたっけな!
その瞬間、窓の外が暗くなって車内の電灯がついた。
私は、トンネルに入って我に帰った。
トンネルの暗さで窓ガラスには
社内が映しだされていた。
そこには
当時の父に似てきた
自分の顔が映っていた。
その目には光るものがあった。
父さん!ごめんな。
車屋辞めちゃって!
怒ってるか?
でもさっ。
車とは全く畑違いのネットビジネスだけど
こうやって、自分のお金で指定席を取って
新幹線に乗れるような金額は稼げるようになったよ。
俺、この世界でがんばるよ!
パァーと明るくなり
トンネルを抜けた目の前には
水面がキラキラ光る海が、一瞬だけ見えていた。